YUI2ndTOURライヴレポート “Spring&Jump” in 広島

 朝7時頃に目覚めると、床に着く前に流していたCDのせいで
コンポのディスプレイにはアルバムのラストナンバーが静止している。
アルバム名は、いまずもがな。
オリコンチャートでは見事1位を飾り、このツアーも追加公演続出の盛況ぶり。
そして二十歳(はたち)になったばかりとあって、10代の集大成にもなるであろう
今回のライヴに見ごたえが無いわけがない。
 1:00過ぎには会場に到着。
ホール入り口ではすでに男の子たちが数人、静かに談笑している。
リハでもやってやしないかと耳を澄ましたが、やっていないようだ。
入ってきた入り口とは逆の扉から外に出てみる。
其処は川に面していて、小奇麗に植物が花壇に収まっている。静かだった。
3・4時間後には嬉嬉として音に打たれているのだ、と思ってみても嫌になるくらい実感が湧かない。
のんびりとした土曜の雰囲気が時間の感覚を鈍らせる。
建物の中に戻ってみると・・・バイトだろう。
私服でスタッフカードをぶら下げた若い兄ちゃんたちがガラスの向こうで談笑しながら、
チラシの束をほぼ作り終えていた。1階から、別のスタッフが階段を駆け上がってくる。
そのすぐ横を無関係な老夫婦が通り過ぎる。そんな不思議な光景を上から眺める。
ぼーっと。何もしないのに着々とライブの時間は近づいてきてくれる。
外の日の光は心地よく、贅沢なひとときだ。
 昼は過ぎてみればあっという間で、5:00の開演も客入れに時間がかかり伸びてた。
会場内では今か今かと待ちわびる賑やかな声が高い天井に反響し合い、気持ちを高ぶらせる。
特に隣りの男子3人はテンションギュイギュイの模様。
(「YUIちゃんカワイーもん♪」・「もうオレやべぇんだけど!」)
そうこうしている内に暗くなり、聞き覚えのあるイントロが聞こえてくる。
YUI2ndツアー「Spring&Jump」の始まりだ。
開演前にステージを覆っていた幕は、無くなるのかと思いきやそのままスクリーンに変化し、
その奥で小さなシルエットがギターを抱えて登場した。
YUIだ。
2ndアルバムの1曲目から始まり、RollingStar・CHE.R.RYとヒット曲を連発。
耳を貫く力強い声、頭を圧迫するギターの音、心臓に響くリズム隊のビート。
テンションは絶頂だ。
曲中で彼女は「このままじゃ終われない、終わりたくないでしょう」と歌う。
けれど「じゃあ自分を信じて走り出しなさい」とは歌わない。
「じっとチャンスを待つのよ」「いま耐え時よ」・・・
その言葉は実行するに難しく厳しい詞(ことば)に思えた。
しかしどんなにプラスな言葉よりも心に沁みた。
現実性を失わない彼女の前向きな詞が人々を惹きつけるのだろうか・・・・。
 MCではネタ帳成る物を片手に、やや緊張気味に彼女は喋る。
途中「広島弁喋ってー」と言う呼びかけに「ち゛ゃ・・ち゛ゃけん?(笑)」
そして、「もっと教えて!」と彼女が言ったと同時にいろいろな方言がステージへ飛びかう。
聞き取れたのか「たいぎい」と言い出した彼女。
そしてどういう意味だと思ったのか、「たいぎい広島ー♪」と叫んだ。
会場は暖かかった。後のアンケートで「あれはねーめんどくさいって意味なんよー」と
書く人はさぞや多かった事だろう。ライブはアンコールを合わせて2時間ほどで、
前回のアルバム曲は2曲ほどしか歌わず、2ndアルバムを歌いつくしたと言った感じだった。
ライブはあっという間に終わってしまった。
体は疲労で重たくなっていた。
しかし足の痛みも体のだるさも、全て愛おしく感じた。
 「大人になんて・・・」そんな曲はもう書けない・・・
10代を乗り越え、とうとう大人になった彼女はいったいこれからどんな曲と詞(ことば)を
紡ぎ出してくれるのだろうか。
楽しみで成らないが、まずは無事にツアーを終える事を祈るばかりである。

文:せばすちゃん