映画「希望の国」

年内最後のこの時間、今年僕が観た映画の中で一番考えさせられる作品を取り上げます。現在、サロンシネマで公開中の「希望の国」。「冷たい 熱帯魚」、「恋の罪」、「ヒミズ」と作品を発表するごとに話題を呼ぶ監督・園子温。彼が東日本大震災の被災地で取材を重ね、見聞きした事実をもとに描かれています。舞台は、架空の町・長島県。長崎と広島、そして、福島を連想させますね。大地震と、それに続く原発事故が、人々の生活をたちまち一変させます。隣同士の家が20キロ圏内か圏外かで分断されてしまう現実、故郷に踏みとどまる人もいれば、出ていく人もいます。バラバラになる家族もいれば、帰る場所を失う人もいます。終わりなき絶望と不安の中、生きる希望はどこにあるのか?苦しみながら生き抜く人々を演じる主役をはじめ脇役の人達と、出演者の演技が本当に光っています。他の作品ならば名バイプレーヤー、脇役で味を出す役者・夏八木勲。主人公の妻を演じる大谷直子。このふたりの熱演は、本当に深い感動を覚えました。誰もが安易に答えには至らないと思いますが、監督から考えるきっかけ・難題を突きつけられる作品です。この「希望の国」は、サロンシネマで公開中です。また、福山シネマモードでは、年が明けて1月19日から。シネマ尾道では、2月9日から上映が決まっています。今日紹介した「希望の国」の監督・園子温さんが今年出した「非道に生きる」という本もなかなか読み応えがありますよ。映画監督としての心構え、生き様を教えてくれるので、映像だけでなく文字で園子温を追ってみると、より深く知ることが出来ます。こちらは、年末年始の読書にいかがでしょうか?