映画「ウトヤ島、7月22日」

2011年の夏にノルウェーで実際に起きた衝撃の無差別銃乱射事件を映像化した「ウトヤ島、7月22日」、本当に凄いとしか例えようのない映画です。72分に及んだ銃撃をなんと1カットで撮影しています。この時間が意味するのは、事件発生から終息に要した時間と同様の72分間をあえてワンカットで挑戦しているんです。銃撃に逃げ惑う若者達が極限の恐怖の中でいかに行動していったのか?をカメラは追い続けます。遠くで鳴っている銃の音が、段々近づいてくる。自分の周りを泣き叫びながら逃げる人々。観客はその場にいて、まるで同じ時間を共有しているかのような恐怖・絶望にさらされます。これらの緊張感・緊迫感を表現するのに1カット撮影が実に効果的な演出だという事が分かります。映画鑑賞後、72分の1カット撮影の前にどれだけの準備・リハーサルがあったのだろうか?との疑問が浮かびました。そこには途方もない仕事の積み重ねがあったのだと思います。また、この作品には音楽もナレーションもありません。ただ唯一、シンディ・ローパーのある曲を主人公が口ずさむように歌うシーンがあります。歌詞の良さに思わず感情移入してしまいました。なぜ、この曲なのか?監督の想いが選曲に表れています。「ウトヤ島、7月22日」は、昨日からバルト11で公開中です。正直、重い作品ですし、観終わって笑顔で劇場を後にするようなものではありません。ただ、無差別テロが世界の至る所で頻発している現在、この社会状況を鑑みて今観ておくべき作品だと心から思えました。