映画「誰もがそれを知っている」

イラン人の映画監督・アスガー・ファルハディが、スペイン旅行で目にした行方不明の子供の写真をきっかけに長年構想を練り続け、作品を完成させました。その「誰もがそれを知っている」は、ヒューマン・サスペンスに仕上がっています。スペインの田舎町で、結婚式という晴れの舞台に誘拐事件が起きます。幸せから一転、絶望・悲しみへの急展開へ。
仲の良い家族に疑心暗鬼が拡がります。事件が発端となり、その家族に長年隠されていた秘密が露わになっていくというストーリーです。実生活で夫婦でもあるペネロペ・クルスとハビエル・バルデムが主人公をつとめています。この二人はもちろんの事、出演者全員と呼んでいいほど演技達者が揃った作品です。画面に現れる人々達・子役から年配者までの見事な演技を堪能出来ます。タイトルの「誰もがそれを知っている」、ここに深い意味が込められています。誰が、何を、知っているのか? 誰は、知らないのか? 皆、知っているのか?この疑問符が観客の頭の片隅に存在しながら、物語は進行します。話の軸は、誰が犯人なのか?というミステリーですが、家族・親族・村の人々を巻き込みながら、仕事がない、単純労働は季節労働者といった・・スペインが抱える現在の問題も浮き彫りにしていきます。誰が悪い、誰に責任があるのか・・にとどまらない一作と言えるでしょう。個人的には、犯人探しよりもそれ以上の楽しみがあるミステリーでした。「誰もがそれを知っている」は、八丁座で昨日から公開されています。上映スケジュールなどは、劇場のホームページでご確認下さい。